岩波新書の『和本のすすめ――江戸を読み解くために
』(中野三敏・著)を興味深く読みました。このままでは、江戸時代以前の日本文化と、将来の日本人とが切り離され、取り返しのつかない事態を招きかねないという危機感が緊急性をもって伝わってきました。
一太郎などで変体仮名のフォントを提供すれば、高校生にも気楽に使われるようになるという妙案には、「それはいい!」と思わず感歎。なにしろATOKでは歴史的仮名遣いにも対応しているのだから、こんなことを実行してくれる文書作成ソフトがあるとすれば一太郎くらいしかないでしょう。
私自身は、学生時代に国文学科で変体仮名を習い、四十近くなってから県の文書館で開催した古文書講座に一年通っています。著者の言う「和本リテラシー」とまではいかなくても、和本を読めるようになるためのスタートラインは、他の人よりは少し前にあると思っていいでしょう。それでも、やっぱり読めません。今のところは。
江戸時代のことについて、そこらへんの本に書いてあること以上に何かを知りたいと思ったら、くずし文字を読むのが一番です。その宝物は、身近にたくさん埋もれています。事実は歴史の闇に葬られた訳ではなく、ただ掘り出されるのを待っているだけ。
いささかのスキルと誠実な仕事ぶりを持った人が「和本リテラシー」を身につければ、たとえ学問的には歴史の素人であっても、和本を翻刻することで歴史研究に貢献することが可能です。これはなかなか心の躍る話ではないでしょうか。
同じ著者の『和本の海へ 豊饒の江戸文化
』と『書誌学談義 江戸の板本
』も図書館で借りてきました。そのうち『くずし字辞典』を抱えて(じつは持ってるんです)、山口県文書館に通うかもしれません。